柏市の医療の現状と今後

 柏市には、最先端医療を担う国立がんセンター東病院や慈恵医大柏病院、市民の日頃の健康を支える中小病院や医院、歯科、薬局、訪問看護、介護支援施設、また保健所など、多くの医療資源がありますが、現在はまだ、すべての市民が効率の良い理想的な医療を受けられる状況にはありません。その解決には、医療現場の市民目線での問題点を知り、広い視野と長期的展望、公の視点と熱意のある医療の専門家である医師が、実現性のある事業を企画、提案、遂行することが必要です。


柏市医師会がしてきたこと・これからすべきこと

 柏市医師会は設立より50余年の間、市民の生命と健康を守るという使命をもって、日常診療および公的地域医療活動(基本健診、各種がん検診、乳幼児健診、予防接種、学校保健、産業保健、介護事業、障害者自立支援、環境保護、救急災害時の活動等)や疾病予防のための健康教育啓発事業、医療情報案内や医療事故対策などを行ってまいりました。
 そしてこれからは、医師会の諸先輩方の意志を引き継いで、これらの活動をさらに充実、発展させていきたいと考えております。その一歩として、平成21年11月、柏市政が新体制となるにあたり柏市医師会では、市民の皆様に最良の医療を提供するため、柏市に以下のような提言を致しました。

医師会からの10の提言

1)救急・災害医療,危機管理体制について
2)総合的医療福祉施設「ウエルネス柏」の適切な運営について
3)柏市医療連携システムについて
4)正確な医療情報の提供について
5)産科・小児科医療について
6)心の健康について
7)健康教育について
8)医師(医療者)不足について
9)高齢者医療・福祉について
10)障害者支援について
*)柏市医療懇談会の定期開催について

1)救急・災害医療,危機管理体制について

現状:形式的な体制はあるものの実践的でなく,行政と医師会の連携が欠如しており,実際の緊急時には混乱を生じ,適切な対応は困難であると思われます。
対策:行政・医師会間の協力下に,救急患者の受け入れ体制についての現状把握と実践的なシステム整備,新型インフルエンザを含めた感染症及び地震や大火災等の災害に対する統一性のある危機管理体制を,早急に再構築すべきであると思います。
 また,適切な対応をしていくためには,国からの指示を待つのみでなく柏市としての方針を随時決定していくことが必要であると思います。

<柏市からの回答>
 市において,大災害が発生した場合やその恐れがある場合は,「災害対策本部」を,また,市民の生命・身体・財産等に甚大な被害・影響を及ぼす危機事象が発生した場合やその恐れがある場合は,「危機管理対策本部」を設置することとしています。
 いずれの場合においても,保健福祉部市救護班が柏市医師会,県及び各医療機関等と連携し,迅速な応急医療体制を整備する計画となっております。
 ご指摘のとおり,災害や危機事象は不測の事態が起こるため,計画した応急医療体制が実際に機能するのか否か不確実な部分があります。
 このため,市といたしましても,貴医師会を始め,各防災関係機関等と協議しながら,実践に即した救急・災害医療及び危機管理体制の見直しを図っていきたいと考えております。


2)「ウエルネス柏」の適切な運営について

現状:来年4月より始動予定ですが,行政と三師会の間での保健所・診療業務の検討が不十分な状況で,無駄のない円滑な運営は困難であるように思います。
対策:保健所,夜間・休日診療,歯科診療,障害者施設運営など,無駄なく統一性のある業務を提供するためには,行政側の各担当である保健福祉部,保険年金課,医療公社等と,医師会,歯科医師会,薬剤師会の間での,意見調整と整合性を図ることが必要であり,始動に向けて同施設の全体的な運営委員会を設置すべきであると考えております。

<柏市からの回答>
 総合保健医療福祉施設が,柏市の保健,医療及び福祉施策を推進する総合拠点として,その機能を発揮するためには,施設の有効的な活用と施設内に配置される各部署の連携が必須となります。
 これまで,施設開設の準備に向けて,関係部署と個別の検討会議や行政内部での検討会議を行ってきました。
 今後は,全体の施設の有効活用と各部署の連携を目的とした,関係部署が一同に会して話し合える機会を,年度内に設けていくよう調整してまいります。


3)柏市医療連携システムについて

現状:柏市にはあらゆる種類の医療施設と人材は存在しますが,医療連携システムが存在せず,市民にとっては恵まれた環境にあるとはいえません。
対策:現在,保健衛生審議会・がん対策専門分科会において,がん医療連携システムを整えておりますが,それを基盤としてすべての疾患における連携システムへと拡げていき,柏市の医療資源を市民が有効に活用できるようにすることが必要です。そして総合的医療福祉施設内に,がん及びその他疾患の総合支援部門を設置し,常時市民のニーズに応えるだけでなく,人材育成のための研修会・セミナーや連携強化を図るための各種意見交換会の開催をも企画,実行,継続できるようにして頂きたいと思います。

<柏市からの回答>
 県の保健医療計画におきまして,各医療機関の役割分担と連携を明確にした「循環型地域医療連携システム」が推進されています。
 また,がんや脳卒中などのハイリスクの疾病につきましては,県が地域医療連携パスを作成し,効果的で質の高い医療の提供と患者の安心を確保するための具体的取り組みが進められています。
 市といたしましても,市民の方々が個々のニーズに合わせ,連続的に適切な医療を享受できるよう,貴医師会を中心とした関係機関等との連携強化について,様々な方法で支援していきたいと考えています。
 がんの医療連携につきましては,平成22年1月21日開催の柏市保健衛生審議会に「柏市保健衛生審議会がん対策専門分科会報告書」が提出され,市民が「がんになっても安心して住みなれた地域で暮らしていく」ため,関係者同士の顔が見える関係づくりと相互の連携体制をシステムとして構築する「がん対策ネットワーク」づくりを推進していくとともに,それぞれの関係機関が担う役割について市民に分かりやすく伝えることが求められたところです。
 このため,市では,ウェルネス柏内に設置を予定している総合相談部門内に,「がん対策ネットワーク」づくりを推進するための機能を設け,がんの医療連携の推進を当該総合相談部門の役割として位置付け,平成22年度からがん対策ネットワークづくりの事業を実施するよう,関係部署と対応を図っていく考えです。


4)正確な医療情報の提供について

現状:ちまたには様々な医療情報が散乱し,一般市民は本当に必要な情報が得にくく,正しい情報を判断しづらい状況となっております。
対策:健康相談,医療施設の利用法,感染症や救急災害,食品についての情報など,正確で新しいあらゆる医療情報をいつでも提供できる,公的な医療情報センターの常設が必要で,これは上記項目3)と合わせて行うことが望ましいと思われます。

<柏市からの回答>
 医療情報の提供につきましては,貴医師会独自の取り組みに加え,貴医師会にご協力をいただき,広報かしわや柏市ホームページを通じて行っており,市民からの電話や来所による問い合わせには,保健福祉部及び保健所の各課が対応しています。
 このため,いつでも,誰でも,容易に,必要な情報を得ることができるよう,今後とも柏市ホームページの内容の整理と充実に努めてまいります。


5)産科・小児科医療について

現状:柏市内の産科は減り,小児科も少なく,周産期医療においては他市に頼らざるを得ず,安心して出産,子育てのできる状況にありません。
対策:柏市民が安心して出産,子育てをするために,周産期センターの整備も含め,財政とマンパワーの面からも早期実現性のある具体策を,行政と医師会及び関係団体とともに検討,推進すべきであると思います。若い世代の住民が増えて,地元の産業も栄え,柏市が活性化されていくためには,子育て支援を含めて,産科・小児科医療の充実を図ることが大切ではないでしょうか。

<柏市からの回答>
 全国的に少子高齢化が急速に進行する中で,子どもを安心して産み,育てる環境を整備することが求められております。
 一方,現在,出産に対応する産婦人科の医療提供体制が,救急医療のあり方を含め,全国的に問題になっております。
 こうした中,柏市民が安心して出産,子育てが出来る環境を整えることは,市政の上からも重要な課題の一つと認識しているところです。
 しかしながら,柏市を含む東葛北部医療圏域には,同クラスの病院と位置付けられた病院はありますが,周産期母子医療センターはいまだございません。
 今後も引き続き,慈恵会医科大学附属柏病院を周産期母子医療センターに位置付けられるよう,県に要望していく考えです。
 なお,小児科につきましては,市立柏病院での設置を目指して,現在,医師の確保も含め活動を行っており,一日も早い開設を目指しているところです。
 今後とも貴医師会と協力の上,生み,育てやすい環境を整備するため,子育て支援の充実に努めてまいります。


6)心の健康について

現状:家庭や学校,職場など,心のケアを必要とする人は益々増えるとともに自殺者数も増加しておりますが,対応する専門医師は極めて少ない状況です。
対策:年齢,環境に関わらず増加する自殺を予防するためには,家庭,学校,職場における心のケアをもっと身近なものにするための教育・啓発とともに,医療者のみならず,ボランティアを募り,心のケア・セミナーを定期開催,心のケアに対応できる人材を育成し,対応することが必要であると思います。

<柏市からの回答>
 メンタルヘルス対策を行うことは,自殺予防対策や心の健康づくりを積極的に推進していく上できわめて重要なものと考えております。
 市では,平成19年度から千葉大学(清水教授・精神科医)との連携により,精神疾患の治療法として注目されている「心の健康づくりと認知行動療法学習交流会」を開催し,心の予防医学の普及と精神保健福祉に関心のある医療職,心理職,看護職及び福祉職等のスタッフ間の相互交流とネットワークづくりを行ってきました。今年度は,セラピストになるためのトレーニングをテーマに講座を開催し,約100名の方に参加していただきました。
 また,心の健康づくりを推進するため,千葉大学との連携事業として,うつ傾向にある方や不安のようなネガティブな感情を抱きやすい方を対象に,「バイロン・ケイティのワーク」の手法を伝える市民講座を開催し,参加者の方々の不安や抑うつに関する数値の減少が見られ,一定の有効性が認められました。
 今後も引き続き,貴医師会と連携して,この人材養成の充実を推進していきたいと考えております。


7)健康教育について

現状:現在,一般市民には,健康についての正しい知識を得る場が少なく,疾病の早期発見,予防などのためにも,安定した啓発教育が求められております。平成15年からは健康づくりシステム検討会(市と三師会による健康推進事業の検討会)にて健康教育事業についても検討,企画し,多くの健康フォーラムや地域健康講座を開催してきましたが,対象となる年代には偏りがあります。
対策:健康教育・啓発方法の具体案「柏市方式」として,医師会を中心とした関係団体で,健康教育読本を作成し,義務教育課程における健康教育授業「心と体の健康」を,できれば各学年に対して行い,柏市の将来を担う若者を育てていくことが重要であると思います。

<柏市からの回答>
 地域健康講座につきましては,三師会のご協力をいただき,平成20年度は,18回開催し,888人の市民に参加していただきました。地域の近隣センター等,市民が集まりやすい会場で行う健康講座は,参加した市民にとって満足度も高く,地元地域で開業されている医師,歯科医師及び薬剤師の先生の講話は非常に生活に役立つという評価を参加者から得ています。日頃ゆっくり主治医と話す機会がない市民にとって,このような機会は貴重であり,今後も継続していきたいと考えております。
 対象者につきましては,ご指摘のとおり開催日時等の影響で中高年に偏る傾向がありましたが,平成20年度からは,小児科医師にご協力をいただき,乳幼児の保護者向けの講座も徐々に増加してまいりました。平成21年度からは,沼南庁舎のこども図書館での健康講座を開催し,若い保護者向けの健康教育活動も開始しております。今後も,こども図書館や近隣センター等,市民の参加しやすい会場での健康教育活動を継続していきたいと考えております。
 また,ご提案の「健康教育読本」につきましては,貴医師会にもご協力いただいて実施しております「思春期保健関係者会議」等で,学校関係者と,その内容や活用の仕方についても協議検討を図っていきたいと考えております。
 健康教育・啓発方法の具体策案(柏市方式)につきましては,現在各学校では,学習指導要領に基づいて保健の授業を行っています。薬物乱用や思春期の保健につきましては,外部の専門機関に依頼し,効果的な授業を行うように指導しているところです。各学校では,児童生徒の実態に応じてさまざまな専門機関と連携して授業を行っております。
 性教育の授業につきましては,柏市の保健主事・養護教諭が中心となって作成した手引「生と愛と性」を活用しているところです。
 今後,さらに貴医師会の協力が得られるということであれば,たいへんありがたいことであり,健康教育の充実のために是非連携した取組みを進めていきたいと考えております。


8)医師(医療者)不足について

現状:地域や領域(科)における医療従事者の不均衡が生じ,医療者の不足が問題となっており,その解決が急務であります。
対策:行政と医療関連団体が協力して,未だできていない現状の把握をし,需要と供給が明らかとなる工夫,例えば公的医療人材バンクの設置など,施設間で人材においても連携協力のできる環境をつくることが必要です。

<柏市からの回答>
 全国的に医師不足が深刻化しており,この問題は市においても例外ではありません。特に産婦人科や小児科等特定の診療科の医師が不足しているのが現状です。このような問題は,一つの市で解決できる問題ではなく,広域的に検討していく必要があるものと考えております。
 市では,今後とも,医師の確保を含めた地域医療の確保について,県及び国へ要望してまいります。
 また,市といたしましても,貴医師会や協力医療機関と協議し,可能な対策について検討していきたいと考えております。


9)高齢者医療・福祉について

現状:柏市の高齢者比率も上昇し,施設に入居できずに独居する老人も多く,ケアは不十分であると思われます。
対策:恵まれた環境にある方だけでなく,すべての高齢者への配慮をするために,地域ごとに見守り,支援していくシステム(各地区地域包括支援センターの充実:人員)の整備が必要であると思います。

<柏市からの回答>
 地域包括支援センターは,高齢者が住み慣れた地域で安心して生活ができるよう介護保険サービスを始め各種サービスや地域の住民活動を結びつけながら,様々な支援を実施する高齢者支援のための中核的機関であります。
 また,市におきましては,高齢者いきいきプラン21に基づき,高齢者の日常的な生活圏域(7圏域)毎に1箇所設置することとしております。
 これまで,平成18年度に直営1箇所を設置してからスタートとし,平成20,21年度に各2箇所に委託設置,最終年の平成22年度からは3箇所への設置を予定し,7圏域全域への設置が完了する予定です。
 各地域包括支援センターには,高齢者人口の状況に合わせ,常勤の専門職を4~5名配置し,地域の関係機関と連携を図りながら支援に当たっております。
 ご指摘のありました地域での見守りや支援システムにつきましては,貴医師会の協力を得て,各地域包括支援センター毎に医療関係者,民生委員及び地域関係者等を含めた包括支援ネットワークの場を設け,要援護者の発見から専門的な支援のための関係づくりや支援システムの構築に向けて,現在取り組んでいるところです。


10)障害者支援について

現状:現在の障害者支援については,相次ぐ変更により,実際の現場において多くの問題が生じております。
対策:障害者支援の現場での問題点を明らかにし,関係団体とともに医療の専門家も加わり検討し,対応することが必要です。そして,障害者を保護するだけでなく,市民が障害者の立場を理解・支援できるような環境を創っていくことも考えるべきではないでしょうか。

<柏市からの回答>
 市といたしましては,障害者に対する支援の必要性が多様化していると認識しており,それに伴って発生する様々な課題に取り組んでおります。
 今後,医療に関連する諸施策の改正等が見込まれる場合には,適宜貴医師会を始め関係団体へ情報提供を行っていくとともに,必要に応じて協議をしていきたいと考えております。
 また,障害者の理解・支援できる環境作りにつきましては,障害者基本計画や地域健康福祉計画に基づき,協働による福祉活動の充実を図りながら,医療部門との連携を視野に入れた支援体制を構築していきたいと考えております。


*)柏市医療懇談会の定期開催について

現状:行政は柏市の医療の現状と問題点について,現場レベルでの把握はできておらず,現在の医療行政の評価と今後の具体的な対策が求められています。
要望:柏市医師会では,柏市行政と医療関係団体が集まり,柏市の医療の現状と問題点,解決方法について語り合う会「柏市医療懇談会」を定期開催(年に数回)し,柏市の医療・福祉を改善していきたいと考えております。是非とも,柏市の公的な会としてご設置ください。


<柏市からの回答
>
 
医療関連の問題は多岐に渡るため,テーマに併せて,各種会議並びに検討会等を設置し,貴医師会の先生方にご協力をいただいているところです。
 今後も引き続き,医療,福祉の質の向上を図るため,貴医師会との連携強化に努めてまいります。
 また,定期的な懇談会の開催につきましては,実施へ向けて関係各課と調整してまいります。


 
copyright (C) 2011  柏市民の健康を守る会 all right reserved.